2016年6月19日日曜日

デザイナーはなぜMS Pゴシックを使わないのか?

デザイナーはなぜMS Pゴシックを使わないのか? 
という記事が定期的に流れてくる。部分的にはあってるけど、体系的に説明できてない。美しさって主観以外の要素でフォントは決まってくる。

補足含めて「デザイナーはなぜMS Pゴシックを使わないのか? 」を説明したい。


デザイナーにも、Webデザイナーも紙のデザイナーもいる

まず、デザイナーと言っても、Webのデザイナーもいれば紙のデザイナーもいる。それをひとまとめにしちゃいけない。

そしてWebデザイナーの場合には、フォントは「ユーザーのブラウザで表示できるものの中から選ばざるを得ない」という制約がある。Windowsで標準で用意されているフォントがいくら「美しくない」からといって、それを嘆くのはWebデザイナーではない。

一方で紙のデザイナーは印刷さえデキてしまえば好きなフォントが使える。高価なフォントでもOKだ。

等幅、欧文プロポーショナル、和文プロポーショナルの3種類

記事では、「MSPのPはプロポーショナルのP」と言い切ってるが、実は3種類ある。
  1. 英数半角、和文は全角の「等幅フォント」
  2. 英数はプロポーショナル(文字ごとに違う)和文は全角の、「欧文プロポーショナル」
  3. 英数も和文もプロポーショナルの「和文プロポーショナル」
そして、MSPは3の和文プロポーショナル。一方で書籍や雑誌などの印刷物でみるプロポーショナルは2の欧文プロポーショナルを使ってる。プロポーショナルかどうかではなく、和文含めてプロポーショナル。

ポスターなどは、1行2行のレイアウトを重視するから、和文もプロポーショナルにすることが多い(というか、文字単位で字詰をして、視認性を高くする)

視認性と可読性

視認性というのが見やすさ。ポスターのキャッチやボタンのラベルとかが視認性を求められる。一方で可読性は文章といてどれくらい読みやすいかということ。長い文章を早く読む人って、大事なところだけを読む。日本語の場合は大事な部分は漢字で書かれるから、「濃い部分だけに目をとめる」ことで早くよめる。だからひらがなはできるだけ「すかすか」した状態の方がありがたいので、書籍などはかなを詰めないのが、書き手と読み手のお約束ということになってる。
(しかしながらこれだけ、和文プロポーショナルが増えてくると、この相場も崩れているとは思う)

ビットマップフォントとアウトラインフォント

なにかっつーと、MSゴシックはビットマップだからダメだぁって話。ビットマップフォントはジャギジャギしているけど、アウトラインフォントはなめらか。そはそうだけど、実際に10×10のピクセル数の中でアウトラインとったところで単にぼやけた文字にしかならない。画数の多い文字は、すべての線を書ききれないんだから、どこかで省略が必要。だからある程度文字が小さくなると、ビットマップになる方がユーザにとって親切。

MS UIゴシックという伏兵

記事では「メイリオがいいですね」と用途も決めずにいってる。メイリオは確かに小さくてもビットマップフォントには切り替わらないので、アウトライン第一主義の人たちにはウケが良かった。だけど、幅が広いのでボタンなどのラベルには不向き。そういう用途には、MS UIゴシックという、「とにかく詰める」フォントがある。

印刷物で見慣れたフォントというのがある

印刷物で見慣れているかどうかというのは結構「美しさ」を語る上で重要。フォントそのものの美しさなんてユーザに伝えるべきものではなく、「違和感なく」読者に伝えることが大事。そうなると、印刷物の相場って何?って話。ここ20年くらいは、雑誌では「モリサワフォント」がスタンダード。「モリサワ基本7書体」を見れば、「よくある印刷物のフォント」であることはわかると思う。書籍になると、印刷会社が独自のフォントを使うのでフォント単体で出まわらなかったりする。

雑誌や書籍は和文プロポーショナルはほとんど使わない。

MS Pゴシックが仮に綺麗でも技術的要因で印刷物には使わなかった

MS PゴシックというのはTrueTypeフォント。一方印刷物で過去使われていたのはPostScriptフォント。使いたくても使えなかったのだ。アウトラインをとれば使えたが、むやみにデータを重くしてまで使うぎりもない。またDTPの大半はMacを使っていたので、MS Pゴシックそのものがないケースもある。今やPostScriptにこだわらなくても、PDFにに埋め込むことができればどんなフォントでもいいのだが、わざわざMS Pに置き換える理由がない。

フォントは3種類に留めるという基本

本文、見出し、プラスアルファというくらいで、使うフォントってあまり多くしちゃいけない。文字の大きさだけでも、見出しかどうかも分かる。無理にフォントを切り替えるべきじゃない。モリサワ基本書体で十分だ。

さらにWebデザインでは、印刷物ほどの解像度がないため、明朝のような細いフォントを使うことがない。ほぼゴシック。フォントの種類ではなく、フォントサイズと、文字色で種類を分けていく。文字色といっても赤や青ではなく、黒の濃さを変えている。

結論

  • 印刷物ならモリサワ7書体から選ぶのが超無難(これらを排除する理由がない)
  • Webデザインは、ユーザのデバイスのフォントに依存する。ゴシックってことくらいを決めるまでができること。優先度として「メイリオがあればメイリオで見てね」ってくらい。更に今はスマホでも見られる。メイリオもMS Pゴシックもない。

おまけ

マンガなどは、漢字はゴシック・かなは明朝というトリッキーなフォントをつかってる。これはこれで一つの「相場」。

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